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社長メッセ―ジ
この1年、価値観のさらなる二極化が進み、特に購買行動においては、ハレの商品はハレにふさわしい場所で、日用品は身近な場所でとお客さまが購入場所を選び、同じ商品であっても、高額なジュエリーを身近なSC(ショッピングセンター)でお求めになる方は減っている印象です。
こうした影響もあり、2023年8月期の売上高は、SC業態は低調、都市部の一部の百貨店内店舗は非常に堅調といった現象が顕著でした。前期比若干減はコロナ禍後の人手不足が要因です。そこで人材力強化の取組として、対面研修が叶わなかったコロナ禍の3年間で弱まった販売力の強化を意図した研修、および専門チームによる細やかなフォローアップを精力的に実施したことに加え、当社の行動基準「festaria Group エンゲージメントルール」への共感を重視した「エンゲージメント採用」を強化しました。社員の自信とプライドを養い精神価値への共感を高めたことは、その他インフラ整備と相まって、当期より結果となって現れてくると見込んでいます。
利益面については、1年間で金価格が16%上昇するなど、材料費高騰の事態に見舞われ、また資源高を背景に様々な経費も急騰したことにより粗利の確保しにくい事業構造となったことは否めません。資源の高騰傾向は今後も続くと見込まれ、期末予想はこの影響を織り込んだ数字としています。
レッドオーシャンを避け、精神価値を追求
すでにレッドオーシャンと化した低価格帯のジュエリーを扱うブランドは、シルバーやステンレス等の異素材によるデザイン重視のアクセサリーブランドの道を選び、金やプラチナ素材にこだわるブランドは、ボリューム感を落とした華奢なデザインを選ばざるを得なくなっています。当社は、金やプラチナ素材へのこだわりを諦めるか、一層の価値訴求をするかの二択において、これまで大切に築いてきたブランディングの観点から、迷わず強みを徹底的に強化し、付加価値の創出を続けていくという決断をしました。SC・地方店でお求めやすいジュエリーとして、シルバーのペアリングやユニセックスな大ぶりのアイテムを選ばれる方たちの精神価値にいかに応えていくかがこれからの私たちの新しい挑戦の一つになってくると捉えています。
その一方で富裕層ビジネスは順調に拡大し、カナダ王室造幣局世界限定の新たなコインの取り扱いも始まりました。こうした2年間の取組を通じて、フェスタリアはファッション&ブライダルのベーシックブランド以外にも、新しいハイグレード商品を有するユニークな会社だと評価が高まり、10月11日には、伊勢丹新宿店ラグジュアリーゾーンに、既存のフェスタリアブランドでは取り扱いのない、プレステージライン <WISH UPON A STAR®> を誕生させました。世界のラグジュアリーブランドと並ぶ出店であり、戦略的に私たちに足りないものを一つひとつ埋めていくパイロットショップとして、またシャワー効果を全国に広げていくフラッグシップとして、次なる成長への礎としてまいります。
IT技術で強みを最大化する
フェスタリアのEコマース平均購入単価は、一般的な価格帯より極端に高い傾向にあり、これは店舗で購入していたお客さまがWebでお求めになる機会が増えたためと捉えています。そこで、今後はWeb購入のお客さまと店頭購入のお客さま情報を一元化するCRM(Customer Relationship Management)を構築し、お客さまのLTV(Life Time Value)を高めることが大きなテーマになると考えています。近い将来、Webでジュエリーを購入された際にも、店舗の担当者からお礼状を届け、アフターケアも承る接客のあり方を実現するとともに、ベーシックラインからプレステージラインへと、よりbijou de famille(精神価値)が伝わる商品を手にしていただける道筋を示すような仕組みにしていきたいと考えています。また、3Dデジタルカスタマイズサービスもようやく動き始め、カスタム需要の潜在的な可能性を改めて確認できています。具体的にお客さまとデザインを作り上げていくスキルが必要であり、そのあり方を先行店で確立しながら、2023年末の全店展開に向けて準備を進めています。婚姻組数減に伴い、ブライダルマーケットが縮小を続ける中、特にブライダル需要のオーダーメイドスタイルへの移行は、お客さまにとっての精神価値の醸成と当社ビジネスモデルの適正化の両立が叶うスタイルであり、早期に軌道に乗せていきたい考えです。
コロナ禍の3年間の中で、改めて当社の強み、足りていないもの、今、投資すべきこと等、様々なことに気付かされました。その一つとして、人的資本投資の視点からも「いい会社とは何か」を考え、人をコストではなく投資と位置づけ、しっかりリターンを生み出す会社を目指すという意図を込め、賃上げおよび働き方改革に連動した福利厚生の拡充を実施しました。
引き続き、「人」「ノウハウ」「仕組み」を競争優位性の源泉と捉えた「強みの進化」と一層の付加価値創出を軸とした「ビジネスモデルの再構築」を進めながら、精神価値による訴求を極めてまいります。
2023年11月28日
フェスタリアホールディングス株式会社
貞松 隆弥