ダイヤモンドのカラーグレードとは
ひと括りに「無色透明」と表現されがちなダイヤモンドですが、文字通りクリアなものもあれば、わずかに黄味がかったものもあります。まずは、ダイヤモンドのカラーグレードについて詳しく紹介します。
ダイヤモンドのカラーチャート
ダイヤモンドを評価する国際的な基準としては、米国宝石学会(GIA)が考案したグレーディングシステムが広く採用されており、同システムにはカラーのグレーディング基準も含まれています。
基準となるマスターストーンと比較して対象のダイヤモンドのカラーを見極め、カラーチャート(カラースケール)に示されたD〜Zまでの23段階の等級に分類するという方法で品質評価します。
ダイヤモンドのカラーをグレードづけするための物差しとなるマスターストーンに選ばれるのは、厳しい条件を満たしたダイヤモンドだけ。
Dが完全な無色透明の最高グレード。アルファベットがZに近づくほど黄色味が濃いカラーです。
一般的に最高品質とされるダイヤモンドは無色透明。黄色味を帯びた色合いとなるほどグレードは下がります。
なぜDから始まるのか
ダイヤモンドのカラーにおける最高評価の基準となるのはDグレードですが、なぜAではなくDなのでしょうか。
その理由は過去の評価方法にあります。
GIAの考案したグレーディングシステムが一般的となる前には、ダイヤモンドのカラーは明確な基準や定義なしにA、B、Cの3等級におおまかに分類されるなどしていました。
こうした旧来の分類方法とはまったく異なる新しいグレーディングシステムであることから、等級を表すためにすでに使用されていたA~Cのアルファベットを飛ばした、D以降のアルファベットをそのスケールに用いたのです。
無色のグレードは?
「完全」あるいは「完全にほぼ近い無色」とされるのは、D、E、Fの3つのグレードです。
なお、それに次ぐG、H、I、Jのグレードは「無色に近い」とされますが、プロのグレーダー(鑑定士)が専用の道具を使い、じっくりと見極めて初めて「完全に無色というわけではない」とわかるレベルです。
枠に留めた状態のものを正面から見た場合は、ほとんど無色にしか見えません。
カラーとクラリティ、どっちを優先すべき?
ダイヤモンドを評価する要素として、カラーの他にもたとえばクラリティ(透明度)があります。
カラーもクラリティも、一定以上のグレードであれば、そのグレードが1等級上がったとしてもその差はごくわずか。
それでも、少しでも良いグレードのダイヤモンドを選びたいという際に、カラーとクラリティのどちらを優先してグレードを上げるべきか言えば、カラーを選択すべきです。
これは、クラリティに影響する内部に含まれた何らかの不純物や結晶の構造が、同時にカラーを生み出す要素でもあるため。
つまり、カラーのグレードが上がれば、クラリティも必然的に上がるということなのです。
ダイヤモンドのカラーに影響を及ぼす要素
ダイヤモンドのカラーグレードは、その精度を高く維持するために2人以上のグレーダー(鑑定士)によって評価されます。それでもなお、人の目による評価であることに変わりはなく、さまざまな要因により評価結果に誤差が生じる可能性は常にあると言えます。
ダイヤモンドのカット
ダイヤモンドに当たった光は内部で屈折反射し、ダイヤモンドそのものの光沢とあいまって人の目に輝きとして映ります。
その輝きはダイヤモンド自体のカラーの見極めを難しくする要素ですが、カラーを評価するには何らかの光源が必要であり、反射した光の色が作用することは避けられません。
しかも、評価対象のダイヤモンドには光をたくさん反射し美しいきらめきを放つよう計算されたカットが施されています。そのため、通常の環境下であればカラーの判別はまずできないほどです。
光によっても変わる
ダイヤモンド内部で屈折反射した光は、人の目に輝きとして映り、その輝きの色は光源により変わります。
そのため、カラーの評価時に使用する光源は、北側の窓から入る安定した自然光に近いスペクトル分布(光に含まれる各色の割合)のものとすることが厳密に定められています。
具体的には、波長が 366nmの長波紫外線を照射します。
色が違うように見えるその他の要素
ダイヤモンドの大きさによって内部での光の屈折反射の度合いは変わるため、サイズカラーの評価に影響するといわれます。
また、グレーダー(鑑定士)の瞳の色の違いや、装着しているコンタクトレンズの色味が影響する可能性も指摘されています。
しかし、こうしたカラー評価時のノイズに影響されないために、グレーダー(鑑定士)が厳しい訓練を積んでいるという事実にも留意すべきでしょう。
最も大事なのはあなた自身の判定
ダイヤモンドの宝石としての価値や価格を決めるために、無色透明が最高品質という基準が設けられています。しかし、何よりも大切なのは身に着ける方が「良い」と感じるかどうかです。
あなた自身が直感で気に入ったジュエリーを永く身につけましょう。
カラーダイヤモンドは別軸での評価
通常、無色透明に近いほど高品質と評価されるダイヤモンドですが、カラーダイヤモンドについてはまた違った評価をします。カラーダイヤモンドの豊富な色合いとその評価基準をご紹介します。
カラーダイヤモンドのカラーバリエーション
カラーダイヤモンドとは、カラーグレーディングにおいて、最も色が濃いとされるZグレードよりもさらに色味の強いダイヤモンドを指し、その色合いは多種あります。
GIAのカラーチャートに含まれる8色(イエロー、オレンジ、ピンク、レッド、パープル、バイオレット、ブルー、グリーン)以外にも、ホワイト、グレー、ブラック、ブラウンなど。さらにグレイッシュ・グリーン、ブラウニッシュ・ピンクなどと細分化され、ありとあらゆる色が存在するといっても過言ではないほどです。
カラーバリエーション豊富なカラーダイヤモンドのなかでも、人気の高い色をいくつかご紹介しましょう。
《イエローダイヤモンド》
炭素の結晶であるダイヤモンドが形成される段階で、窒素が混入することで生まれるイエローダイヤモンド。太陽のような神秘的な輝きに魅了される人は少なくありません。2010年にティファニーがイエローダイヤモンドコレクションを発表したことも有名ですね。
《ブルーダイヤモンド》
ダイヤモンドが結晶化する際にホウ素が影響して生み出されるブルーダイヤモンド。カラーダイヤモンドの中でも「神様の気まぐれ」と呼ばれるほど希少価値の高いものであると言われています。
花嫁を幸せにするおまじないである「サムシングブルー」が広く知られるにつれて、結婚指輪にブルーダイヤモンドを選択したいと考えるカップルも増えています。
《ピンクダイヤモンド》
一般的なカラーレスダイヤモンドよりも希少性が高く世界で珍重されるピンクダイヤモンド。2017年にはオークションで約76億という高値がついたことでも知られています。
優しい愛を象徴するようなピンクダイヤモンドの輝きはブライダルリングとしても高い人気があります。
カラーダイヤモンドは2種類
カラーダイヤモンド(ファンシーダイヤモンド)のカラーには自然由来のものと、加工によるものとの2種類があり、それぞれナチュラルダイヤモンドとトリートメントダイヤモンドと呼ばれます。
ナチュラルダイヤモンドの天然色は、元素レベルの含有物により違いが現れます。
一方、トリートメントダイヤモンドには、天然のダイヤモンドを熱処理により色変化させたものや、表面にペインティングして着色させたものの他、人工的に作られた合成ダイヤを高温高圧処理で色変化させたものなども含まれます。
天然の状態で色のあるナチュラルダイヤモンドは、普通のクリアなダイヤモンドに比べ産出量がずっと少ないため、希少価値が高いのです。
カラーダイヤモンドの選び方
通常のカラーグレーディングにおいては、無色透明に近いほど評価は高くなります。
しかし、カラーダイヤモンドの場合はその色味が珍重されるという性質上、むしろ色の濃いものほど価値が高いとされることが多いです。ただし、色の濃度の他に明度なども関係してくるため、一概に濃色ほど高評価であるとは言い切れません。
また、基本的には色が重視されるカラーダイヤモンドですが、クラリティなどによっても価値が変動します。
ダイヤモンドに関する4つの素朴な疑問をプロが解説
ダイヤモンドの国際的評価基準は時代とともに変化するものなので、混乱してしまうことも。そこで、ダイヤモンドの真の価値を伝えるためのさまざまな研究や取り組みを行う機関である「ダイヤモンド研究所」に、ダイヤモンドに関する素朴な疑問について答えていただきました。
Q1.なぜダイヤモンドには12色のカラーが存在するの?
ダイヤモンドは通常炭素のみで構成されますが、さまざまな不純物が混ざる、または結晶格子の歪みなどによって結晶に色がつくことがあります。
ピンク、レッド、イエロー、オレンジ、グリーン、ブルー、パープル、バイオレット、ブラウン、ホワイト、グレー、ブラックの12色のうち、GIAがカラーダイヤモンドとして対象としているのはブラウン、ホワイト、グレー、ブラックを除く8色です。
Q2.希少性の高い色は?
最も希少性が高い色はレッドとブルーです。どのくらい珍しいかはそもそもの産出量が非常に少ないため正確な数値で表現するのが困難ですが、レッドダイヤモンドは世界で年間数十個しか算出されません。
そもそもレアと言われるピンクダイヤモンドの中から選別されるレッドダイヤモンドは市場に出回ることもほとんどありません。
ブルーダイヤモンドは「神様のきまぐれ」と呼ばれるほどに希少とされています。天然のブルーダイヤモンドはダイヤモンド全体の産出量の0.00001%の確率と言われています。
Q3.同じ大きさなら、無色のダイヤモンドとカラーダイヤモンドのどちらが高価?
概ねカラーダイヤモンドの方が高価ですが、さまざまな条件(色の状態、大きさ)により価格は変わってくるので安易な比較は避けた方が良いでしょう。
カラーダイヤモンドにはファンシービビット~ファンシーライトまでの分類があり、また、同じピンクでも「グレーイッシュ」や「ブラウニッシュ」などが入ると評価は下がります。カラーダイヤモンドは「色」が最大の評価基準になり、クラリティの評価はカラーレス(無色)のダイヤモンドとは全く異なってきます。
Q4.カラーでもそれぞれに石言葉があるの?
花言葉などは耳にしたことがある人が多いかもしれませんが、近年ではカラーダイヤモンドにも意味を持たせる、いわゆる「石言葉」もみられるようになりました。
ピンクダイヤモンド:完全無欠の愛 可憐・優美
ブルーダイヤモンド:幸福を願う
イエローダイヤモンド:金運を高める
グリーンダイヤモンド:恵み
レッドダイヤモンド:永遠の命
※恵みを健康運とするなど、 元の意味は同じでも表現が異なる場合もあります。
ダイヤモンドのカラーは無色を基準に判定される
一般的に、クリアなダイヤモンドの評価は無色透明(Dグレード)に近いほど高くなり、その希少価値は価格にも表れます。とはいえ、上位グレードのものはいずれも肉眼では無色透明としか見えないレベルですので、最高級品にこだわるのでない限り、G~Jグレードでも十分満足できる品質のものが的に入る場合もあります。