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ダイヤモンドについて

2020.04.30

宝石鑑定(グレーディング)におけるダイヤモンドの屈折率とは?

ダイヤモンドは高価なものなので、ジュエリーの価値が価格に見合っているのか気になるところですよね。宝石の価値を正確に判断するのが宝石鑑定(グレーディング)です。ここでは、宝石鑑定(グレーディング)における屈折率の意味や、ダイヤモンドの屈折率について説明していきます。

屈折率の意味

密度の違うものの境目で折れ曲がる特性があるのが光です。密度の低い空気から、密度の高いダイヤモンドに光を当てると、光の速度は遅くなり垂直方向に進みます。一方、ダイヤモンドから空気中に光が出ていく場合、光の速度が早くなり、境界面の水平方向に進みます。

この光の折れ曲がり具合を示す数値が屈折率です。宝石の屈折率を調べるには、屈折計という機械で測定します。ダイヤモンドが天然なのか、あるいは合成なのかはまた別な検査が必要ですが、屈折計で屈折率を調べるのは宝石鑑定(グレーディング)において基本といえます。

ダイヤモンドの屈折率 

ダイヤモンドの屈折率は2.419と他の宝石に比べても高い数値です。ダイヤモンドのシンチレーション(煌めき)は、この高い屈折率が関係するといえます。

ダイヤモンドの光がすべて反射される角度のことを臨界角といいますが、屈折率が高いと臨界角が小さくなる特徴があります。ダイヤモンドの臨界角は約25度。臨界角が小さいため光が反射される領域が広く、輝きが強くなるのです。

光の波長による屈折率の違いとは?高い屈折率を生かすカットも

ダイヤモンドは強い光沢をもつ宝石です。光の波長により屈折率が異なると言われていますが、どういった意味なのでしょうか?また、ダイヤモンドの美しさは屈折率だけで決まるものではありません。ダイヤモンドの輝きを増す複雑なカットについてご説明します。

光の波長によって屈折率は異なる

白色光や太陽の光はさまざまな色が含まれており、1色だけではありません。ダイヤモンドに光が当たるとプリズム効果のように赤や青、緑、黄色などの光が分離し、FIRE(ファイア)と呼ばれる虹色の輝きを放ちます。

ダイヤモンドの屈折率は光の波長(色)によってそれぞれ異なり、とくに青の光は赤の光に比べると屈折率が大きいという特徴をもちます。青と赤の屈折率の差が生じることで、光の波長は鮮明に見えるのです。この差の値を分散率といいますが、ダイヤモンドは0.044の差があり、他の宝石と比べると高い値となっています。

高い屈折率を生かすのが「カットの質」

ダイヤモンドの表面で反射する光の質は、カットの仕方によっても左右されます。ダイヤモンドは世界でもっとも硬い石。その特性から工業的にも重要な物質です。石が硬いことでカットや加工がしやすく、シャープでスムースなカット面を得られます。ダイヤモンドのカットによって、光の反射は強く鋭くなるのです。

ダイヤモンドの高い屈折率を生かすカットで有名なのが、ブリリアント・カット。ブリリアント・カットをおこなうことで、ダイヤモンドの上部から入った光が、内部で複数回反射します。

ダイヤモンドの美しさを際立たせるカットは、カットの総合評価である「プロポーション」と表面の研磨仕上げ状態を示す「ポリッシュ」、対称性を示す「シンメトリー」の3つで評価されます。3つすべてが「Excellent」のトリプルエクセレントが、究極のカットといえるでしょう。

ダイヤモンドの類似石と屈折率について

ダイヤモンド類似石は一見ダイヤモンドに似ているけれど、違う物質のため物理学的な特性が異なります。近年ではダイヤモンド類似石を使ったアクセサリーも多く流通しており、ダイヤモンドよりも安価であるため人気があります。ダイヤモンド類似石の屈折率について見ていきましょう。

類似石キュービックジルコニアの屈折率

ダイヤモンドに見た目がそっくりのキュービック・ジルコニア(CZ)は、ダイヤモンドの類似石として知られています。キュービック・ジルコニアの屈折率は2.15。ダイヤモンドの屈折率よりも大きく、硬度もあります。また、ダイヤモンドよりもキュービック・ジルコニアの方が、分散した虹色の光が強い特徴があります。

ダイヤモンドと比較すると価格が手頃であるため、最近ではアクセサリーとして人気があります。

類似石ジルコンの屈折率

ダイヤモンドの特性に似ている天然石ジルコンは、地球上でもっとも古い鉱物です。無色のジルコンは高い屈折率とファイアをもつ色彩に富んだ宝石。そのため、何世紀にもわたりダイヤモンドと混同されてきました。また、キュービック・ジルコニアとよく似ているので見間違えることも。

ジルコンは高(ハイタイプ)、中、低(ロータイプ)の3種類に分類されます。一般的なハイタイプの屈折率は1.925~1.984。複屈折のため、境界面で屈折する光が2つに分かれます。透明度や輝きはダイヤモンドよりも劣りますが、ペンライトを当てるとダイヤモンドに引けを取らない強いファイアが発せられます。

類似石モアッサナイトの屈折率

ダイヤモンドの屈折率よりも高いのが、ダイヤモンド類似石のモアッサナイト(モアサナイト)です。ダイヤモンドが2.42の屈折率に対し、モアッサナイトは2.65~2.69の複屈折と高い屈折率を誇ります。

モアッサナイトは炭化ケイ素(SiC)の鉱物学上の名前。ダイヤモンドと見た目や特徴は似ているものの、天然石であるダイヤモンドとは違い、人工的な開発で育成された人工石です。光の分散率については0.104と、ダイヤモンドの0.044の2倍以上あります。硬さについてはダイヤモンドに比べるとやや劣りますが、一般的に硬度が高いといわれるルビーやサファイアよりも硬いです。

モアッサナイトのアクセサリーは人工石のため、ダイヤモンドよりもリーズナブルに販売されています。

屈折率1.81以上の意味は?本物と類似石の見分け方

ダイヤモンドの鑑定書(グレーディングレポート)に屈折率1.81以上と書かれているのはなぜでしょうか?また、購入したダイヤモンドが本物なのか気になる場合に、自分でチェックする方法もあるので確認しておくとよいでしょう。

鑑定書(グレーディングレポート)に屈折率1.81以上と書かれている理由 

ダイヤモンドを購入した際、鑑定書(グレーディングレポート)に屈折率1.81以上と書かれているのはなぜなのか、疑問にもつこともあるでしょう。先に述べたように、ダイヤモンドの屈折率を測定するのに用いられるのが屈折計です。

ダイヤモンドのような高い屈折率の鉱物は、通常の屈折計では測定できないのが現状。そのため、屈折率1.81以上と書かれていることが多いのです。屈折計で使用される専用の液体が屈折液ですが、1.81まで測定できる屈折液もあれば、1.78まで測定できる屈折液もあります。

ダイヤモンドと類似石の見分け方

鑑別書でダイヤモンドとなっていても、本物のダイヤモンドなのか心配になることもあるのかもしれません。類似石とダイヤモンドを見分けるには、ある程度自分でチェックできます。

まずは、息を吹きかけてみてどうなったのか見てみましょう。ダイヤモンドは熱伝導率が高い鉱物です。一瞬曇ったけれどすぐに透明になれば、ダイヤモンドの確率が高いといえます。

また、ダイヤモンドは水をはじく性質もあります。水滴を垂らして球状にはじかれるのかを確認してみましょう。

それから、紙に文字や線を書いてその上にダイヤモンドを置く方法もあります。ダイヤモンドは取り込んだ光を大きく屈折させる性質があるので、文字や線の上にダイヤモンドを置くとたいてい下の文字は読めなくなります。

専門機関に依頼する方法も

とはいえ、本物のダイヤモンドかどうかは、専門の鑑定機関で鑑定(グレーディング)してもらうのが確実な方法です。日本国内にはダイヤモンドの鑑定機関がいくつもあります。そのなかでも宝石鑑別団体協議会(AGL)に加盟している販売店に持ち込むのがおすすめです。

AGLは天然ダイヤモンドや合成ダイヤモンド、処理ダイヤモンドの鑑別が可能。ただし、製品の状態やダイヤモンドの大きさによっては、検査が制限されることもあります。検査により天然ダイヤモンドと判断できた場合の表記は以下となります。
・鉱物名 天然ダイヤモンド
・宝石名 ダイヤモンド
これからダイヤモンドを購入予定の場合、鑑定機関の鑑定書(グレーディングレポート)がついているのかも重要なので、合わせて確認しておきましょう。

ダイヤモンドの屈折率は煌めきに関係している 

ダイヤモンドの煌めきは屈折率の高さが関係しています。また、光の波長により屈折率が異なるため、虹色の輝きが鮮明に見えるといえるでしょう。ダイヤモンドの高い屈折率を生かすためには、カットの質にこだわるのも重要な点です。

そして、類似石は天然ダイヤモンド同様に屈折率や分散率が高く、見た目が似ているので購入の際は注意しましょう。販売店が信頼の高い鑑定機関に加盟しているのか確認しておくと安心ですね。

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